1.日常のストレス反応について

 日々の生活の中で、私たちはいろいろな出来事に出合います。「よしがんばろう」と思うようなこともあれば「いやだな。困ったな。」というものもあります。身体や気持ちにストレスがかかると平常の状態に戻そうとする自然な反応が生じます。上手く対応できていると負担にはならないのですが、うまくいかなくなったり、やり残しが積み重なってゆくと身体や気持ちに変化が現れてきます。
日常のストレスについては、資料「ストレスへの対処法」を参照してください。
PDFファイルに、ストレスとは? ストレスによる反応、およびストレスへの対処方法がイラストでわかりやすく説明されています。

2.心の外傷とは?

 日常のストレスと心の外傷は異なります。心の外傷体験は、予期せぬ事件、事故、災害などに遭遇したときに生じるものです。多くの場合は一過性で時間とともに改善します。周囲の大人が物理的な安全や安心感を与えてあげてください。(資料「子どものストレス反応と心理的な応急処置」)。しかし、自分や近親者の生命や身体保全に対する重大な脅威となる出来事に巻き込まれると、思い出したくないのに何度も侵入的に繰り返し思い出したり、他人との疎遠感や隔絶感があったり、眠れなくなったりします。また、そのときの出来事と似た状況に出会うと昔のことだから今は安全だとわかっていても、胸がドキドキしたり、震えたりして驚いてしまうなどの症状が現れることがあります。心の外傷後これらの症状が伴う障害を「急性ストレス障害(Acute Stress Disorder)」あるいは「心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder: PTSD)」と呼びます。ASDとPTSDは、症状が似通っていますが、症状が現れる時期と、その持続する期間の違いにより診断されます。一般に症状が出来事から事件直後から1か月以内に発症し、症状が続く期間が1か月以内のときはASDになります。一方、PTSDは、症状の発症が出来事から3か月以内で(場合によっては出来事ののち数年もたってから発症することもあります)、症状が1か月以上続く場合に診断されます。また、もともと不安が高かったり過去に心的外傷体験があったり、災害前に学校での学習の問題・注意力の問題があった子どもは心的外傷に対して反応を起こしやすいと報告されています(斉藤、2004)。

DSM-IV TR による「急性ストレス障害の診断基準」、および「PTSDの診断基準」(PDF)
PDFで載せておきますので症状が強い場合は医師に相談してください。

参考文献:ニューヨーク教育相談室編 (2004)テロ事件と子どもの心 日本人学校・補習校におけるPTSD調査とケア 慶應義塾大学出版会
アメリカ国立子どもトラウマティックストレス・ネットワーク,アメリカ国立PTSDセンター「サイコロジカル・ ファーストエイド実施の手引き第2版」 兵庫県こころのケアセンター訳,2009年3月http://www.j-hits.org/にも対応の詳細があります。