危機介入の流れ
ここでは危機介入を行うに当たっての基本的な流れをまとめてあります。
危機介入を行う際はまず、危機の内容とレベル、支援対象を査定します。その結果を踏まえて支援チームを組み、どのような支援が必要か介入計画を立てます。
1. 危機とは?
個人や集団にとって強いストレスを与えるできごとが起きて、その結果これまでできていた問題解決の方法ができなくなったり、またはこれまでのやり方では問題解決ができなくなったりする状態です。
危機は破壊的な側面を持ちますが、同時に個人や集団が事態を乗り越えて成長して行くきっかけにもなります。
図:個人における危機状況発生のメカニズム
危機状況を招く可能性があるできごと
2. 危機状況下での反応
普段はできている問題解決の方法が使えなくなり、自分の心身の安全を守れない状態になります。
身体症状、苦悩、認知の障害、行動の障害などが現れます。個人や集団にとってその危機状況が深刻であるほど、または適切な援助が受けられないほど、動揺の段階が長引いてしまいます。
詳しくは、資料の「危機場面におけるストレスとそのケア」、「子どものストレス反応と心理的な応急処置」を見てください。
3. 危機介入における支援の流れ
1.危機介入が必要な事態(危機の内容) を把握する
危機状況にいる人は自分からSOSを出せないことがあります。以下の事態は本人と合意が得られずとも介入します。
1)精神的、物理的に自分を傷つける行動がある・・・自傷行為、いじめを受け続ける
2)他人を傷つける行動がある・・・いじめ、暴力、暴言、脅迫
3)命に関わる危険がある・・・感染症、精神疾患の発症と悪化、虐待、自殺、自然災害
4)児童虐待・・・身体的、心理的、性的、ネグレクト
2.危機のレベルを見分ける
事態を過小・過大評価しないことが大切です。介入は各レベル内で収まるようにチームを組んで支援計画を立てます。
レベル1 個人の危機・・・レイプ、家族との生別・死別、事故、喪失体験等
レベル2 組織の一部に関わる危機・・・学級崩壊、盗難、支部が事件に巻き込まれる等
レベル3 組織の危機・・・学校崩壊、会社ぐるみの事件等
レベル4 地域社会を巻き込む危機・・・重大な事件、自然災害、感染症の流行等
3.支援の対象は誰か
危機のレベルが上がるにつれて、支援対象者が増えます。自身が被災者、被害者でありながら、支援を行う立場に立つ人もいることに留意します。(資料「CISと支援者の気持ちの整理について」を参照)
当事者、目撃者(事件・事故を見ていた人への心理的影響は当事者に匹敵します。)
当事者の家族等直接の関係者、目撃者の中で心身に反応が出ている人の家族、同級生、同僚、教員、上司、管理職
4.応急処置
支援者の方から危機的な状況にある人に近づきます。
支援者も含め、その場にいる全員の安全を確保することが第一の目標です。暴力を止めたり、火を消したりなど危険な場面では支援者は決して無理をしないで下さい。
1)身体の安全確保に努める・・・ | 可能なら危険となっているものの排除、安全な場所へ避難誘導、応援要請、医療等の身体的なケア |
2)行動の安全確保に努める・・・ | 衝動的な行動を制止する、事態を煽る観衆を遠ざける、具体的に行動の見通しを立てる |
3)心の安全確保に努める・・・ | 興奮を落ち着かせる、その場でできるリラクゼーション、気分転換、混乱した気持ちを受け止める、刺激となるような写真、映像から遠ざける |
5.介入計画の立案
支援に必要なスタッフを集めてその日のうちに介入計画を立てます。
危機の内容、レベル、支援対象者について査定した情報をもとに
誰が
誰に対して
いつ
どこで
何をするか
を計画にいれます。
6.介入開始
介入計画を実施する際は危機状況下にある集団では以下の表の反応が起きやすいことに留意します。支援チームは時としてミディエーター(調整役)として機能する必要があります。
危機状況下の集団に起きやすい反応
初めて危機に遭遇すると、友人、家族、学校、企業等周囲の方には以下のような反応が生じやすくなります。これは、自然な反応ですが危機介入は早期対応をすると収束も早くできます。以下のような反応が見られたら、右の対応方法を参考にしてみてください。
7.終結及び予期的計画
支援チームは一日の始めにその日のスケジュールを確認するミーティングを行い、一日の終わりにはその日あったことを振り返るミーティング(ディフュージング)を持ちます。ディフュージングではその日の活動中にあった問題、困難だったことを共有し、翌日の支援スケジュールを修正していきます。
通常、危機介入は1ヶ月以内に終了し、以後は中・長期の援助プランに移行します。